James Baldwin‘Tell Me How Long The Train’s Been Gone’全訳終了後の感想

緊張感、切迫感を出すために、題名は「出てからどのくらいたつのか」ではなく「いつ出たのか」と訳したが、内容は盛り上がりに欠け、エンディングも平凡で、翻訳に5年かかったけれど、正直なところ落胆を禁じ得ない*。
題意は、主人公レオ・プラウドハマー(ボールドウインの分身と考えてよい)が何かに乗り遅れたという意味であることは明瞭だ。この「何か」は一つのことがらである必要はなく、ブラックパンサーの急進派黒人解放運動、マルチン・ルーサー・キングの穏健派黒人解放運動、マルコムXのブラックムスリム、それらを含むもっと大きな世界の変化でもあるだろう。

* 酷評のようだが、若いころ「もう一つの国」に感動し、黒人解放運動に献身したボールドウインの「闘争の合間の手記」であるエッセイに胸を熱くした私としては、小説の出来、不出来を論じようとは思わない。1968年当時の彼の考え方や立ち位置を知ることができれば満足なのである。