2021-10-01から1ヶ月間の記事一覧

ジェームズ・ボールドウイン「頭のすぐ上に」抄訳(20)DELLぺーパーバックP219~

クランチとアーサーがニューヨークに戻って、五日か六日たったころ、クランチはジュリアとばったり出会った。土曜の夕方の125番通りだった。彼は七番街を横切って、レノックスと地下鉄のほうに向かっていた。いつもの土曜の夕方と同様、通りは人がいっぱいで…

ジェームズ・ボールドウイン「頭のすぐ上に」抄訳(19)DELLぺーパーバックP218~

ニューヨーク生まれの者が他の都市のことを扱うのは、まったく無茶というものである。せいぜいうまくいって「間違ってる」、最悪の場合は「でたらめじゃないか」と見えてしまう。どの都市も悪意があり、支離滅裂なのである。どの都市も歴史を――いかにも光栄…