2020-01-01から1年間の記事一覧

ジェームス・ボールドウイン「頭のすぐ上に」抄訳(7)DELLベーパーバツクP84

(以下に登場するピーナットは、アーサーをリーダーとするコーラスグループ<シオンのトランペット>のメンバーであった) ピーナットは洗礼を受けてはいるが、ピーナットは洗礼名ではない。母親は彼を産み落としてすぐ死んでしまったので、彼に洗礼を受けさせ…

ジェームス・ボールドウィン「頭のすぐ上に」【あらすじ7】

第二部 エルサレムの12の門 9歳のジュリアが牧師として説教する場面から始まる。説教の内容は、旧約聖書のダビデの物語だった。彼女の両親と弟のジミー(7歳)が前列にすわり、その後ろに18歳のホールと弟のアーサー(11歳)がすわっていた。ホールの両親がジュ…

ジェームス・ボールドウィン「頭のすぐ上に」抄訳(6)DELLベーパーバツクP61

店に入ったとたん、場違いなところに踏み込んだ気がした。私たちは奥の席にすわった。ジュークボックスの音が大きく、客も大声で話していた。 アーサーはびしょ濡れの頭や髪を拭くのにトイレに入った。年配のメイドがにこにこしながら近づいてきた。 「あの…

ジェームス・ボールドウィン「頭のすぐ上に」【あらすじ―6】

ジュリアとホールの交際が始まったのは1957年、アーサーが独立してソロになった年だった。1960年ごろ、彼はフロリダの田舎で公民権運動に参加していたが、専属のピアニストがアラバマで逮捕、投獄されてしまった。私はアーサーが心配でツアーに同伴するよう…

ジェームズ・ボールドウイン「頭のすぐ上に」抄訳とあらすじ

あのころのジャズ

あのころというのは、ジョン・コルトレーンとエリック・ドルフィが活躍し、植草甚一さんがスイングジャーナル誌に健筆をふるっていた1960年代のことだ。古い話だが、甚一さんの「ジャズの前衛と黒人たち」(晶文社1967年5月)に、「エリック・ドルフィの死と『…

ジェームス・ボールドウィン「頭のすぐ上に」抄訳(5)DELLベーパーバツクP52

「こんな時間に」とジュリアが言った。10時を少し過ぎていた。 「いいじゃないか」と私は言った。「君の秘密の恋人に会ってみたいな」 ジュリアが立ち上がると、二度目のベルが鳴った。「秘密の恋人どころか、変なやつかもしれないから、一緒に来てちょうだ…

ジェームス・ボールドウィン「頭のすぐ上に」抄訳とあらすじ

エリック・ドルフィ論集⑤「ファイブスポットVol. 1(ライナーノーツ翻訳)

1961年の夏にファイブスポットにこのクインテットが登場したとき、音楽そのものだけでなく、アイデアによって多くのファンに歓迎された。当時、新しい音楽が台頭しつつあり、このクインテットも、良くも悪くも、それをはっきり打ち出していたのである。さら…

エリック・ドルフィ論集⑤「エリック・ドルフィ・アット・ファイブスポットvol.1」(ライナーノーツ翻訳)

ジェームス・ボールドウィン「頭のすぐ上に」抄訳(4)DELLぺーパーバツクP45

見開きになったそれぞれのページに、アーサーとジュリアが一緒に写っている写真があった。最初の写真はそうとう昔のものだ。ジュリアは白い礼服を着て、白い帽子をかぶっている。アーサーは黒いスーツにワイシャツ、黒のネクタイをして、頭はてかてかの縮毛…

ジェームズ・ボールドウイン「頭のすぐ上に」

ジェームズ・ボールドウイン「頭のすぐ上に」

エリック・ドルフィ論集④「コンプリート・ウプサラ・コンサート」(ライナーノーツ翻訳)

The Complete Uppsala Concert ウプサラコンサートは、1961年にエリック・ドルフィがスエーデンで行った一連のコンサートの一つとして9月4日に行われた。それぞれ地元の大学に付属する学生会館のジャズクラブによって準備され、たいていダンスバンドが一緒に…

エリック・ドルフィ論集④「コンプリート・ウプサラ・コンサート」(ライナーノーツ翻訳)

エリック・ドルフィ論集③「エリック・ドルフィ・アット・ファイブスポット」(ライナーノーツ翻訳)                        

ERIC DORPHY AT THE FIVE SPOT Vol.2 エリック・ドルフィとブッカー・リトル(ブッカー・リトルは、ファイブ・スポットでこのアルバムの録音をした数カ月後の1961年10月、尿毒症のために23才の若さでこの世を去った。)の音楽は、新しいジャズのエネ…

エリック・ドルフィ論集③「エリック・ドルフィ・アット・ファイブスポット Vol.2」(ライナーノーツ翻訳)

ジェームス・ボールドウィン「頭のすぐ上に」抄訳(3)DELLベーパーバツクP35  

「お父さん、話したいことがあるんだ」トニーがこれを言う一瞬前に、彼が長い間求めつづけ、私が逃げつづけたときがきたと理解した。私はオンザロックのウイスキーをすすって言った。「いいよ」。 トニーは彼の大きな手に目をやり、しゃがんで大きな足を抱え…

エリック・ドルフィ論集②「アザー・アスペクツ」(ライナーノーツ翻訳)

OTHER ASPECTS エリック・アラン・ドルフィが、アフロアメリカン・ミュージックの発展の歴史の中で占める高い位置は、1964年6月24日の彼の死の後もゆらぐことはない。彼の影響は、この地球上のすみずみの、あらゆる分野の芸術家におよんでいるのであ…

エリック・ドルフィ論集②「アザー・アスペクツ」

ジェームス・ボールドウィン「頭のすぐ上に」

【あらすじ―3】 ホールとジュリアは、彼女が教会から離れたのちに愛し合った過去がある。そのジュリアの家でバーベキューパーティーがあり、ホールは家族を連れて参加する。ダンスが終わって、息子のトニーが「話がある」というので二人だけで家の外で話すこ…

ジェームス・ボールドウィン「頭のすぐ上に」

エリック・ドルフィ論集①「エッセンシャル・エリック・ドルフィ」(ライナーノーツ翻訳)

THE ESSENTIAL ERIC DOLPHY エリック・ドルフィと同時代にロサンゼルスで育ったわれわれは、レコーディングから遠ざかっていたころの彼のことをよく覚えている。彼の最初のレコーディングは1949年、「ロイ・ポーターと17ビバッパー」のメンバーのときだった…

エリック・ドルフィ論集①「エッセンシャル・エリック・ドルフィ」

エリック・ドルフィ論集①「エッセンシャル・エリック・ドルフィ」

ジェームス・ボールドウィン「頭のすぐ上に」抄訳(2)DELLぺーパーバツクP27

ジェームス・ボールドウィン「頭のすぐ上に」抄訳(2)DELLぺーパーバツクP27 降りそそぐ天上の光のもと、私は荒野を歩む これはアーサーの好きな歌で、ジュリアの教会で彼は初めて聴衆を前にして歌ったのだった。私たちの両親であるポールとフロレンスもそこ…

ジェームス・ボールドウィン「頭のすぐ上に」翻訳中

ジェームス・ボールドウィン「教えてくれ汽車はいつ出たんだ」全訳完了

ジェームス・ボールドウィン「教えてくれ汽車はいつ出たんだ」全訳完了

西穂高紀行