ジェームス・ボールドウィン「頭のすぐ上に」抄訳(4)DELLぺーパーバツクP45

 見開きになったそれぞれのページに、アーサーとジュリアが一緒に写っている写真があった。最初の写真はそうとう昔のものだ。ジュリアは白い礼服を着て、白い帽子をかぶっている。アーサーは黒いスーツにワイシャツ、黒のネクタイをして、頭はてかてかの縮毛である。

 もう一枚はそれからだいぶたったころの、どこかのパーティで撮った写真だ。アーサーの縮毛は矯正されていて、中国襟のぴちっとした青いスーツを着て、首に重そうな金の鎖をかけ、右手の中指に大きな金の指輪をしている。その指輪は、今ジミーが持っている。ほかに欲しがる人がいたが、指に合わなかったのだ。首の鎖はどうなったか、わからない。アーサーの絶頂期の写真だ。私はそのスーツを覚えているし、金の首飾りもわかる。そして得意満面な笑顔も、真っすぐに上げた頭も。彼はジュリアの腰に腕を回していた。ジュリアは髪を上に束ねて、耳や首に銀が光り、長めのフレアのイヴニングガウンを着て、片手に煙草、片手にシャンパングラスを持って笑っているのがとても美しい。

 ジュリアが言った。「この二枚の写真はね、私がアーサーにお願いしたことがあって、二回ともかなえてくれたので、こうして並べてあるの」