2020-02-01から1ヶ月間の記事一覧

短篇小説「階段」

あっという間のできごとだった。 同窓会が終わり、先生と並んで話しながら一階へ降りる階段へ来たとき、先生が足を踏みはずした。先生の体は横になって回転しながら十段ほど落ち、途中の踊り場で止まった。先生はすぐには立ち上がらなかったが、横になったま…

短篇小説「浜辺にて」

短篇小説「浜 辺 に て」 八月の終わり、海も荒れる日が多くなり、くらげが増える。泳いでいると、一瞬太腿あたりを何かが掠め去って、痛みを感じる。慌てて海から上がると、痛みを感じたところがピンク色に腫れ上がっている。そして、夏も終わりだという寂…

吉井勇の短歌

岩波文庫「美しい日本の詩」では、吉井勇の歌を二首あげている。「かにかくに祇園はこいし寝るときも枕の下を水のながるる」「紅灯のちまたに往きてかへらざるひとをまことのわれと思うや」であるが、私なら「比叡ゆきの終り電車のはしる音かすかにひびく冬…

採用されなかった投書(朝日・毎日)「華氏はカシではない」

私たちが温度を表記するときの℃のCは何の意味だろうと以前から気になっていた。今はパソコンという便利なものがあるので、調べてみると、スウェーデンの天文学者セルシウスにちなんでいるという。これを漢字で摂氏と書くのはセルシウスの中国語の摄尔修斯の…

感激の俳句

渡辺白泉「戦争が廊下の奥に立っていた」(岩波文庫新刊「美しい日本の詩」より) ――すごいなあ !