彼女たちは何を歌ったか―黒人女性歌手の嘆き、呻き、叫び
- Billie Holiday「Strange Fruit 」Southern trees bear strange fruit. 南部の木には奇妙な実がなる。 strange fruit とは、リンチで吊るされた黒人の死体のこと。
- Nina Simone 「Don't Explain」 久しぶりに帰ってきた男に「言い訳しなくていいのよ。襟の口紅を拭きなさいな」
- Ella Fitzgerald「St. Louis Blues」 私の彼は、ダイヤの指輪をはめたセントルイスの女のところへ行ってしまった。
- Sarah Vaughan 「Bye-Bye Blackbird」blackbird はクロウタドリだが、ここでは売春婦のヒモ。「ヒモと手をきって故郷のお母さんのところへ帰りたい」
- Clara Smith 「Awful Moanin' Blues」 気分が悪い。悲しみがつきまとう。トラブルつづきで気が変になりそう。古きよき時代は昔の話。戻ってきやしない。それでいつもぶつくさ言うのさ。
- Billie Holiday「My Man」 あいつはうそつきだし、ほかに女がいるし、私を殴る。私の人生まっくら。かったるいったらありゃしない。それでも、私の男。彼に抱かれると、目の前がぱっと明るくなって、もう、どうでもよくなっちゃう。
- Bessie Smith「Young Woman's Blues」 ニワトリの鳴き声で、朝、目を覚ますと、隣に寝ていた彼がいない。枕の上にメモがある。「ジェーン、おまえにゃ頭にきた。結婚話はなかったことにしてくれ」
- Merline Johnson「Bad Wiskey Blues」 安ウイスキーのせいで男に逃げられた。あいつは最高だった。どうしようもない。死ぬまで飲み続けるさ。
- Billie Holiday「Solitude」 孤独の中で、過ぎ去った日々のまぼろし、消えないあなたの思い出。絶望にまみれて、孤独の中で神に祈る――私の愛する人を返して。
- (終)Abbey Lincoln「Freedom Day」 アビイ・リンカンはドラムのマックス・ローチの
妻だった。 彼女の日本公演を聞きに行った時、彼女はアミナタ・モニカと自己紹介した。当時はUSAに絶望して改名する黒人が多かった。