ジェームス・ボールドウィン「頭のすぐ上に」 【あらすじ8】

 ホールは勤め先の布地屋で大きな事故を起こした。梯子に登って布地の重いロールをおろすときに、下で受け取ろうと待っていた相棒にぶつけて怪我をさせてしまったのだ。クビにはならなかったが、その日は帰ってよいということになった。家に帰ると、父のポール、ピーナット、弟のアーサーが歌の練習をしていた。いつもより早く帰ってきて落ち込んでいる息子に何も聞かず、「何か弾いて」という息子の求めに応じて、ポールはデューク・エリントンの<アクロス・ザ・トラック・ブルース>を弾いた。