ジェームズ・ボールドウィン「頭のすぐ上に」 【あらすじ31】

アーサーがホールのアパートを訪ねてきて、大成功だったカナダ公演の話をしているときに、ジミーがやってきた。ジュリアもくることになっていた。ジミーはピアニストになるのが夢で、幼なじみでゴスペル歌手として成功しているアーサーがあこがれだった。何かとアーサーの気を引こうとするが、アーサーは迷惑そうだった。ホールの目には、何年ぶりかの再会なのに、ジミーの態度はなれなれしく映った。そうのちにジュリアが来て、四人でディナーに行くことになったので、ジミーはいったん着替えに帰り、ホールの知っているハーレムのレッド・ルースターで落ち合うことになった。この店はなかなかいい店なのだが、つらい思い出のある<ヨルダンの猫>ともマルタのいるところとも近かったので一人では足をむけたことがなかった。ジュリアと付き合うようになって、閉ざしたホールの心を彼女が開いてくれたのかもしれない。ジミーは見違えるほどドレスアップしてやってきた。それは、ジュリアのためではなく、私のためでもなく、レッド・ルースターという店のためでもなく、アーサーのためだった。