ジェームズ・ボールドウィン「頭のすぐ上に」 【あらすじ21】

  アーサーと一緒にジュリアを訪ねた三日後が四日後に、クランチは一人でジュリアを訪ね、父親のジョエルが不在だったので、二人は性的関係を結んだ。父親が奪ったものをクランチが取り返してくれたと感じ、「こんな幸せな気持ちになったのは初めて」と彼に打ち明けるジュリア。一方、クランチは二人の子ども――一人は少年(アーサー)、一人は少女(ジュリア)と関係をもった自分は異常なのかと自問する。その日はアーサーと約束があったので、クランチはジュリアを連れてアーサーの家に向かう。ジュリアは、少女から女性に変貌していた。二人が近づいてくるのを窓からみたアーサーは「クランチが知らない女を連れてきた」と言い、「ジュリアじゃないの」と母親に笑われる。

    アーサーの母フロレンスは、わずか14歳のジュリアの将来が心配だった。南部のおばあちゃんのところに預けたジミーを引き取って、二人で父のポールとは別のところで暮らしたいというジュリアに対して、フロレンスは「自分の将来を考えなさい」とさとすのだった。彼女のすすめにしたがって、ジュリアはその晩泊まることなり、アーサーとクランチが事情を書いたポールあてのメモを届け、その帰りに二人はクランチのアパートに行った。