2020-01-01から1年間の記事一覧

James Baldwin‘Tell Me How Long The Train’s Been Gone’全訳終了後の感想

緊張感、切迫感を出すために、題名は「出てからどのくらいたつのか」ではなく「いつ出たのか」と訳したが、内容は盛り上がりに欠け、エンディングも平凡で、翻訳に5年かかったけれど、正直なところ落胆を禁じ得ない*。題意は、主人公レオ・プラウドハマー(…

甲申政変(朝鮮1988年)の中心人物 金玉均

金玉均の死体に凌遅の刑が加えられた揚花津というところが広大な墓地になっていることを知って、なるほどそうだろうなあと思った。凌遅の刑とは、四肢、頭部を切断し、放置して衆目に晒す極刑である。「大逆無道」の旗を立てて、三叉に組んだ棒に吊るされた…

友への手紙~高野吉野紀行~

先日は大変お世話になり、ありがとうございました。おかげさまで、時間的な余裕もでき、のんびりと楽しい旅ができました。 西大寺から橿原神宮で乗り換え、吉野まで一時間半ほどでした。そこからケーブルでのぼると黒門というのがあって、さらに後醍醐天皇陵…

短篇小説「階段」

あっという間のできごとだった。 同窓会が終わり、先生と並んで話しながら一階へ降りる階段へ来たとき、先生が足を踏みはずした。先生の体は横になって回転しながら十段ほど落ち、途中の踊り場で止まった。先生はすぐには立ち上がらなかったが、横になったま…

短篇小説「浜辺にて」

短篇小説「浜 辺 に て」 八月の終わり、海も荒れる日が多くなり、くらげが増える。泳いでいると、一瞬太腿あたりを何かが掠め去って、痛みを感じる。慌てて海から上がると、痛みを感じたところがピンク色に腫れ上がっている。そして、夏も終わりだという寂…

吉井勇の短歌

岩波文庫「美しい日本の詩」では、吉井勇の歌を二首あげている。「かにかくに祇園はこいし寝るときも枕の下を水のながるる」「紅灯のちまたに往きてかへらざるひとをまことのわれと思うや」であるが、私なら「比叡ゆきの終り電車のはしる音かすかにひびく冬…

採用されなかった投書(朝日・毎日)「華氏はカシではない」

私たちが温度を表記するときの℃のCは何の意味だろうと以前から気になっていた。今はパソコンという便利なものがあるので、調べてみると、スウェーデンの天文学者セルシウスにちなんでいるという。これを漢字で摂氏と書くのはセルシウスの中国語の摄尔修斯の…

感激の俳句

渡辺白泉「戦争が廊下の奥に立っていた」(岩波文庫新刊「美しい日本の詩」より) ――すごいなあ !